若手卓越支援部門
工学研究科所属の若手研究者の研究活動支援を実施し、次世代を担う研究リーダーの育成を行います。特に卓越した若手研究者に対して、独立した研究環境や研究交流の場を提供し、若手研究者が高いモチベーションの下で最先端の研究活動や、先進的な研究分野の開拓をできるよう支援します。 本部門は、PIとして世界レベルの研究領域開拓を目指す「若手卓越教員」と、優れた業績を有する「次世代リーダー教員」から構成されます。
若手卓越教員
筋肉・受容器・神経デバイスの超分散化で切り拓く無脳ロボティクス <2021年度採択>
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2023/11/2 テクノアリーナ若手卓越教員 増田 容一助教に「テクノアリーナ准教授」の称号を授与
ミクロ空間から解き明かす亀裂岩体のふるまいと長期性能 <2022年度採択>
世界三位の地熱資源大国日本にとって地熱発電は魅力的な再生可能エネルギーであり、地熱発電を促進する技術群の確立・実用化が渇望されています。特に、地下の高温岩体中に流体の貯留層となる亀裂網を人工造成し、地熱エネルギーの継続的抽出を狙う貯留層造成型の地熱開発技術には大きな期待が寄せられています。本研究では、地熱貯留層の造成~状態・性能の長期変化まで、ミクロな亀裂内空間も含め正確に予測する数値解析技術を開発し、持続可能な地熱エネルギー抽出をもたらす貯留層の確実な設計・造成を可能にします。これにより、貯留層造成型地熱開発技術の実用化をもたらし、膨大な地熱資源をフル活用可能な地熱大開発時代到来へ繋げます。
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2024/5/2 テクノアリーナ若手卓越教員 緒方 奨 助教、松﨑 賢寿 助教に「テクノアリーナ准教授」の称号を付与
発生と疾病のバイオフォトメカニクス <2022年度採択>
本研究では、オルガノイド(臓器の種)の発生を最大化する“硬さ”の役割を解明するべく、独自の光計測・光制御技術を組み合わせたシステムを構築します。本システムにより、”身近な物理量である硬さ”で培養法を統一化して、誰もがオルガノイド培養のできる未来に繋げます。さらに、臓器恒常性が破綻して起こる疾病化の機序についても、硬さの役割を解明します。最近では、細胞表面の超解像度での光計測法(J Phys Chem Lett 2022 & 2024)、細胞集合の制御法(iScience 2022、Bioconj Chem 2023)を開発しました。今後も、テクノアリーナ内でも連携を強め、バイオ・フォトニクス・メカニクスが融合した新領域を創出します。
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2024/5/2 テクノアリーナ若手卓越教員 緒方 奨 助教、松﨑 賢寿 助教に「テクノアリーナ准教授」の称号を付与
励起一重項と三重項のエネルギー逆転の創発 <2023年度採択>
芳香族クラスターの特性を活かした触媒機能開拓と応用研究 <2023年度採択>
プラスチック・医薬品・ディスプレイ・染料・衣料品など、私達の生活は様々な「有機化合物」によって支えられおり、こうした多様性の原動力となるのが有機分子そのものの構造多様性です。私は、かご型構造を持つクラスター分子に特有の「三次元芳香族性」という性質に着目して、これを化学反応の駆動力として組み込んだ新しい触媒設計コンセプトの実証&実用化を目指します。これまでの手法を凌駕する、高効率かつ高選択的な分子変換手法を確立することで、化学産業の省資源化&省エネルギー化を実現し、持続可能な発展に貢献することが期待できます。
「分活」を実現する分子技術の創出 <2023年度採択>
本研究は、粗水素(H2とCOやCO2の混合ガス)が未開拓な工業資源であることに注目し、粗水素を直接的に利用した有機化合物の水素化反応の開発に取り組みます。特に、水素化ターゲットとなる有機化合物として芳香族複素環化合物を用いることで、粗水素ガスからH2を直接的に分離・貯蔵・運搬する革新的技術の確立を目指します。つまり、【粗水素→高純度水素→H2貯蔵・運搬】という流れの既存技術に対して【粗水素→H2貯蔵・運搬】という新たな技術を検証します。これにより、バイオマスを含む炭素資源を効率的かつ安定的に利用した水素社会の実現に貢献します。
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2024/3/4 テクノアリーナ若手卓越教員の星本准教授が「関西スタートアップアカデミア・コアリション(KSAC)2022年度起業家活動支援プログラム」の研究・技術シーズとして紹介されました。
YouTube動画:https://www.youtube.com/watch?v=lQCdQNxe9XE
関連記事:https://forbesjapan.com/articles/detail/69303
低次元ナノ材料を可能にする精密無機合成の開発 <2024年度採択>
有機物からなる物質はこれまで石油資源を基に自在な合成手法が確立されてきました。一方で無機物質は高い安定性が魅力ですが、既存の手法で合成すると一般的に最安定の構造になることが新規材料の開発においては短所となっています。本研究ではこうした無機物質を精密に合成する新手法を開拓し、多彩な無機元素が発現する電子物性をナノ構造により引き出した新たな材料化学の発展を目指します。例えば、単原子層に構造制御して合成したボロフェン類縁体が無機物でありながら液晶機能を発現することを見出しています。こうした無機材料を様々に合成して機能解明することで、次世代の機能性無機材料を開拓していきます。
表面・界面デザインによる新機能ナノ材料の創成 <2024年度採択>
量子ドットは、半導体のエネルギーバンド間の電子遷移に基づく発光機構を持ち、従来の蛍光色素とは異なるメカニズムで高い色純度を実現しています。また、サイズや組成の調整により発光波長を自在に制御できるため、テレビなどの民生品への応用が広がっています。本研究では、毒性の低い複数元素からなる新しい量子ドットの機能向上を目指します。元素数が増加することで合成の難易度は上がりますが、特定のナノ粒子を選択的に合成する新しい手法を開発しています。さらに、本研究で得られた多元ナノ材料の合成・修飾技術をエネルギー関連分野にも応用し、ナノ構造を持つ材料の創出を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目指します。
典型元素とπ電子の協奏が拓く革新的物質機能材料の創製 <2024年度採択>
『典型元素』と『π電子』は共に分子性物質の重要な機能源です。しかしながら、革新的な機能性物質群の基盤開発が希求されている中で、両者の高い潜在能力が物質科学全般に波及し、有効活用されてきたとは言えません。複数の機能源を有する系も開発されてきましたが、それぞれ別個に作動するか、主たる機能に対し補助的な役割を果たすにとどまっており、新機軸を生み出せていません。この現状を打破すべく、本研究では2つの機能源が協奏的に作用することで発現する未踏の電子状態・物性・反応性の探索と、機能開拓を目指します。本研究を通して、未来社会に資する革新的な物質機能材料の創製と、その設計指針の確立に貢献します。
材料変形挙動の可視化を通じた革新的ものづくり技術の創出 <2024年度採択>
あらゆる産業の基盤である「ものづくり」の分野においては、材料の難加工化や加工の高速化・高荷重化への対応、さらには環境負荷低減に対する要求など、高度化・複雑化が急速に進んでおり、これらを解決するためのブレイクスルーが強く求められています。そこで本研究では、多くの要因が相互に影響しあう極めて複雑なプロセスである加工現象を“可視化”することによって、現象そのものを深く理解し、革新的なものづくり技術を創出することを目指します。これらを通じて得られた知見は、表面化学、トライボロジー、弾塑性学といった分野との学際的な融合・発展も大いに期待できると考えています。
論理ゲートに基づく細胞内インテリジェント重合法の確立 <2024年度採択>
生化学的シグナルに応答した、タンパク質や多糖などの種々の機能性生体高分子の合成反応は多岐にわたる生命機能の制御において重要な役割を担います。本研究では『多重論理ゲートに基づいた生化学的シグナル応答性インテリジェントPET-RAFT(iPET-RAFT)』によって特定の細胞内や小器官内選択的な合成高分子の細胞内重合を世界に先駆けて実現し、細胞機能操作のための新たな方法論として確立します。本技術ならびにそのバイオテクノロジーとしての応用に関する未踏の学理を開拓・体系化し、新たな学術領域『細胞内高分子工学』創発に向けた基盤とします。
トポロジカル⽣体組織光学に基づく in silico 光医学 <2024年度採択>
光を用いた治療は、低エネルギーで副作用が少なく、臨床の広い分野で有効性が示されています。しかし、微小な治療対象に対して高い精度で光照射することに課題がありました。生体組織は不均質であるため、治療のための照射光が吸収や散乱などの複雑な動きを見せるためです。本研究では、トポロジカル生体組織光学という新しいアプローチを用いて、組織内での光の振る舞いを詳しく解明し、細胞レベルでの正確な標的照射の実現に向けた研究に取り組みます。また、光と生体組織との相互作用をシミュレートするin silicoモデルを活用して、光治療の精度向上のための技術を開発し、低侵襲な光治療技術の発展に貢献します。
微視的輸送現象論の開拓 <2024年度採択>
原子・分子スケールの熱流体輸送現象は現代社会の発展に寄与する微視的なものづくりにおいて重要ですが、その描像を的確にとらえ制御することに関しては課題が多く残されています。本研究では,巨視的な熱流体力学における輸送現象論の考えを根底から変革し、原子スケールの本質的に非平衡な過程において熱流体力学的な場の保存則に基づく輸送現象論の創出を行います。そして、エネルギー科学発展の根幹である材料の物性や熱流体現象(エネルギー輸送、濡れ、相変化現象等)に関して、創出した輸送現象論に基づき解明する新たな学術を構築することに挑戦します。
骨基質構造の階層的規則性を生み出す細胞機能の新原理 <2024年度採択>
材料工学の立場から原子レベルで生命現象を捉えることで、疾患や外傷で失われた生体機能を回復させるための新しい材料設計・開発に取り組んでいます。とりわけ、遺伝子やタンパク質などのナノ生体分子から、細胞、組織、臓器にいたるまでの多階層3次元生体組織材料を工学的に操作し、個体レベルで生体機能を制御するための新しい材料開発や最先端計測に基づくバイオ工学融合研究を展開しています。金属3Dプリンティングや材料先端加工を駆使した細胞・生体制御と、材料/生体界面での機能発現メカニズム解明を両輪として取り組み、材料工学の観点から世界の医療技術革新を実現するための最先端研究を進めています。
次世代タンパク質間相互作用計測プラットフォームの創出 <2024年度採択>
タンパク質が生体分子と織り成す相互作用を理解することは、生命機能の基本原理の解明と、それに基づく薬剤やバイオテクノロジーツールの開発に繋がります。しかし、従来法による相互作用計測は感度や並列性に欠け、相互作用の全貌はブラックボックスのままです。私はこれまで、ナノポアセンシングと呼ばれる分析技術を利用して、タンパク質のアミノ酸配列や翻訳後修飾などを読み取る手法を開発してきました(Nature 2024)。本研究では、この技術を応用してタンパク質間相互作用を大規模並列的に1分子計測する方法論を確立し、プロテオミクスの変革に挑戦します。