大阪大学大学院工学研究科 原研究室

japaneseenglish

研究室紹介

01
研究の特徴のイラスト

研究の特徴

 当研究室では、フューチャー・デザインに関わる理論的研究および社会実践を先導してきました。下の図に示すように、フューチャー・デザインに関わる理論的な研究の深化(左側)と、実社会の課題解決を目指した実践(右側)とを両輪として、研究活動を行っていることが当研究室の最大の特徴です。これを通じて、将来世代持続可能な社会を引き継ぐための社会の仕組みのデザインと、時間軸を取り入れた新たな社会工学の開拓を進めています。
 フューチャー・デザイン実践は、様々なステークホルダー(政府機関、自治体、産業界、研究機関など)と連携をして進めていることも特徴です。なお、実践の領域、下図に例示したものを含めて、資源・エネルギー、カーボンニュートラル、環境計画、都市計画・まちづくり、教育プログラム開発、産業技術イノベーション(事業戦略、R&D戦略)など、多岐に及びます。

理論と実践を両輪としたFD研究
02
大学院研究の流れのイラスト

大学院研究の流れ

【博士前期課程(修士)の例】
 修士一年目の春夏学期には、研究室ゼミで関連する論文の輪講を通じてフューチャー・デザインに関する最先端の議論や実践の研究を学びます。同学期には、大学院工学研究科で「フューチャー・デザイン」(15コマ2単位)の講義も開講されているので、フューチャー・デザインに関する考え方や理解を深めることができます。また修士研究のテーマもこの期間に具体化していきます。
 1年目の秋冬学期からは、本格的な研究活動がスタートします。当研究室では、自治体などの公的機関や産業界などのステークホルダーとの連携を通じたフューチャー・デザイン実践を重視しており、これらの連携の中で研究を進めることが可能です。これにより、当研究室での研究活動が、実社会の中での意思決定や実課題解決とどのように結びついているかを感じ取りながら先端的なフューチャー・デザイン研究を進めることが可能となります。
 研究テーマに応じて、当該研究に必要となる方法論やスキル(データ解析、モデリングなど)も身に着け、研究に応用していくことになります。

03
卒業生からのメッセージのイラスト

卒業生からのメッセージ

23年度卒業生
①研究活動ではどこと連携し、どのような研究を実施しましたか。

 大阪府吹田市水道部と連携し、仮想将来世代の導入によって水道のインフラ維持管理への視点がどのように変化するかを、大規模アンケート調査及び当時実践デザインを通じて研究しました。


②研究活動やフューチャー・デザインの学習を経て、何を学びましたか。

 FDの研究を通じ、現時点を生きている人が意識しづらい”将来性”という視点を予め適切に評価に組み込むことの困難さ及び必要性を学ぶことが出来た。業務やプライベートを問わず、様々な選択にて、将来の展望や持続可能性といった項目を評価軸に組み入れるようになったり、これらの評価要素としてのウェイトが大きくなったと感じています。また、吹田市水道部と連携して実施した大規模調査アンケートや討議実践では、数多くのステークホルダーと協働する際の心構えや仮説の重要性を学ぶことができました。


③研究室や研究活動での学びは現在どのように活かされていますか。また、フューチャー・デザインの今後の発展に向けてメッセージをお願いします。

 カテゴリーを問わずに将来性を評価し、適切な判断を下すという貌で社会の発展に展開していけると展望しています。当方は金融会社のリスク管理部門で勤務しており、従来の伝統的な分野のみならず、様々な分野でリスクの判断が求められることを実感しています。こうした新しい分野にて知見が無い中でも適切なリスクテイク及びリスクヘッジを行う際に、FDの考え方が活きる場面が来るのではと考えています。

24年度卒業生
①研究活動ではどこと連携し、どのような研究を実施しましたか。

 学内外の関係者と連携し、2つのFDワークショップの発話データを対象に、「テキストマイニング(特徴語・共起ネットワーク等)」と「第三者評価」による仮想将来世代と現世代の発話内容の分析比較・検証を行いました。これにより、仮想将来世代の議論・思考の特徴の抽出と、評価手法の有用性を検討しました。


②研究活動やフューチャー・デザインの学習を経て、何を学びましたか。

 FDを学習する中で、現世代の利害を考えることから一旦離れ、将来世代の立場から物事を評価するというプロセス・考え方を得ることができました。修士研究では、現世代と将来世代でのそれぞれの発話の可視化と評価軸の明確化、そして定性評価と定量評価の往復で多面的に論点を捉える重要性を学びました。


③研究室や研究活動での学びは現在どのように活かされていますか。また、フューチャー・デザインの今後の発展に向けてメッセージをお願いします。

 「10年後、20年後の人にとってこの判断は正しいか」を一度立ち止まって考える習慣が身につきました。企業や地域の話し合いでこの視点を共有するだけでも、落ち着いた合意と偏りの少ない選択に近づけると考えます。 今後は、この姿勢を会議やワークショップの「進め方」として広げ、長期志向の意思決定を日常の仕組みにしていけると考えます。

25年度卒業生 ➊
①研究活動ではどこと連携し、どのような研究を実施しましたか。

 大阪府吹田市・豊中市、兵庫県西宮市・尼崎市に加え、経産省と環境省の地方部局と連携して、ワークショップを活用した、防災とカーボンニュートラルに関する統合的な施策の検討・合意形成に仮想将来世代を導入する効果を研究していました。


②研究活動やフューチャー・デザインの学習を経て、何を学びましたか。

 修士研究の活動を通して、修士の学位に相応しい研究遂行力と、修了後に院卒社会人として必要なスキルを身に付けることができたと考えています。
 具体的には、まずは週一回のゼミを通してFDに関する学習を経ながら、FDについて明らかになっていない点をリサーチクエスチョンとして設定し、先行研究の調査や仮説の設定、研究の流れを構想するといったプロセスを自力で取り組む力が身に付きました。
 加えて、ゼミでの進捗報告や学会での発表を通して、研究内容を分かりやすく伝えるプレゼン力や、論理的に議論する力も身に付けることができました。
 また、本研究室のテーマであるFDを学ぶことで、学部時代の専攻・専門知識を超えて、環境問題や社会的な課題、人・自治体・企業等が持つ視点や考え方を学ぶことができ、複数の分野を横断した幅広な知識や視点を身に付けることができました。


③研究室や研究活動での学びは現在どのように活かされていますか。また、フューチャー・デザインの今後の発展に向けてメッセージをお願いします。

 FD研究は、修士課程で求められる研究遂行力の涵養に加えて、自治体や国、企業といった主体がどのような視点で社会と関わって、サステナビリディ問題に向き合っているのかを学び、仮想将来世代によって人はどのようにして思考が変化するのかを知る唯一の研究テーマであると思います。
 したがって、FD研究を通して、理系の学部生にとっては接点の無かった主体と関わることで、将来活かせることができる、理系社会人として不足していたであろう様々な主体の視点・考え方を持てるのではと考えています。
 加えて、FDは比較的新しい学問であり、社会への導入やその効果について明らかにすべき点も多くあります。つまり、より一層のFDの展開には、原研究室の学生一人一人のFD研究に掛かっているといっても過言ではないと思います。原研究室で一人でも多くの学生がFD研究に興味を持ち、取り組んでいただけることを期待しています。

25年度卒業生 ➋
①研究活動ではどこと連携し、どのような研究を実施しましたか。

 茨城県水戸市および茨城大学と連携し、気候変動適応問題にFDを用いることによる効果の検証を行いました。


②研究活動やフューチャー・デザインの学習を経て、何を学びましたか。

 研究の自由度が高いので、自律的に課題を考え取り組むことができました。また、実際に行政の現場で実践を行うことで、視野も広がったと感じています。


③研究室や研究活動での学びは現在どのように活かされていますか。また、フューチャー・デザインの今後の発展に向けてメッセージをお願いします。

 現在IT系の会社に勤めていますが、技術だけではなく、それをどう長期的に社会に広げていくか、という視点が加わったと感じています。これからもテクノロジーの進化は加速していくと思いますが、それを社会に実装していく過程で、FDは大きく寄与すると考えています。

25年度卒業生 ➌
①研究活動ではどこと連携し、どのような研究を実施しましたか。

 岩手県矢巾町と連携し、都市計画マスタープランの評価に対するFDの効果を、ワークショップやアンケート調査等を通じて検証いたしました。


②研究活動やフューチャー・デザインの学習を経て、何を学びましたか。

 単に将来のことを現在の視点で考えるだけでは得られない意思や発想を、仮想将来世代が持っていることを、今回の研究を通して実感いたしました。


③研究室や研究活動での学びは現在どのように活かされていますか。また、フューチャー・デザインの今後の発展に向けてメッセージをお願いします。

 矢巾町のように、組織としてFDに取り組む動きが全国に広がっていけば、FDの認知度が高まり、さまざまな分野から研究が加速するのではないかと期待しております。

04
フューチャー・デザイン実践者からのメッセージのイラスト

フューチャー・デザイン実践者からのメッセージ

岩手県矢巾町 吉岡律司 様
①阪大チーム(原研究室)との連携でのFD実践はどのような目的や内容だったしょうか。また、実践によってどのような効果や結果に結びついたでしょうか?

 矢巾町では、水道事業において「重層的な住民参加」という手法を開発し、住民と一緒に将来の水道のビジョンを描いてきました。ワークショップでは「水道料金を値上げしてでも将来に備えるべきだ」といった提案が出るなど、未来のために今できることを真剣に話し合う場となりました。ただ、その議論はどうしても「今の制約を前提にした許容範囲」にとどまり、長期的な課題や将来の選択肢を十分に広げることは難しいと感じていました。その時、大阪大学から提案を受けたのがフューチャー・デザイン(FD)です。矢巾町はこの手法を「地方創生プラン」「水道事業経営戦略」「公共施設等総合管理計画」「総合計画」の策定に応用してきましたが、将来世代の立場に立つことで議論の質が大きく変わることを実感しました。参加者からは「未来の町を考えることで今の課題がよく見える」との声も多く、政策の方向性に反映されています。


②今後、フューチャー・デザインをどのように実践・応用していきたいですか?(今後の展望)

 矢巾町では、大阪大学の原研究室と一緒に、フューチャー・デザイン(FD)という手法を政策づくりに取り入れてきました。2023年には、初めて行政計画の「アセスメント」に応用し、都市計画マスタープランを題材に職員20名が参加したワークショップを実施しました。参加者は現世代と仮想将来世代に分かれ、全4回の議論を重ねた結果、双方の視点を組み合わせて5つの重要施策を提案しました。特に「都市開発と農村地域の格差」といった難しい課題では、将来世代の立場から考えることで、潜在的なリスクや価値を見直すことができ、現実的で持続可能な改善策につながりました。この取り組みで改めて実感したのは、今の延長だけでは見えにくい課題も、将来世代の視点を取り入れると鮮明に浮かび上がるということです。矢巾町では今後、都市計画だけでなく、水道や下水道といった生活を支えるインフラの在り方についてもアセスメントを含めたFDを活用したいと考えています。

大阪府吹田市 楠本直樹 様
①阪大チーム(原研究室)との連携でのFD実践はどのような目的や内容だったしょうか。また、実践によってどのような効果や結果に結びついたでしょうか?

 吹田市は大阪大学との連携協定に基づき、以前から環境分野などに関する調査・研究を連携して実施していました。2014年度には、大阪大学から新たな取組としてフューチャー・デザインに関する提案があり、調査・研究の一環として市民とともに初めてのフューチャー・デザインのワークショップを実施しました。
 その後も、環境問題から水道事業、まちづくりへとテーマを広げるとともに、他の自治体へと参加者も広げ、数多くのワークショップを実施しています。
 効果としては、ワークショップの参加者は仮想将来世代となり、今までの立場や経験による考え方から発想が転換され、多様なアイデアを出し合うことで、コミュニケーションが活性化されるとともに、30年後の将来を自分事として考え、現世代と将来世代の双方の利益について俯瞰的な視点を持つことができるようになり、新たな仕組みづくりやそれに関わる意識改革の必要性等を重視した、現状にとらわれない特徴的なアイデアが多く出るようになりました。また、毎回ワークショップの最後には、参加者に一体感が生まれ、もう少し続けたいという声や楽しかった等の感想をいただいています。
 フューチャー・デザインの輪が広がることで、様々な事業を実施するにあたり、他の機関との情報共有や連携がスムーズになり、施策の効果的な推進につながることを期待しています。


②今後、フューチャー・デザインをどのように実践・応用していきたいですか?(今後の展望)

 本市では、第3次環境基本計画策定時に、市民参加型のフューチャー・デザインのワークショップを実施しました。実施に向けての日程調整や準備は大変なところもありましたが、環境問題の解決等の長期的な課題を検討する枠組みとしてはとても有効であると考えています。
 引き続き、行政マンとしてのスキルを高めてくれる職員研修として、あるいは次回の計画改定時に市民の声を効果的に施策に取り入れる仕組として、フューチャー・デザインの活用を広げていきたいと考えています。
 皆さんも、ぜひ将来世代として考えてみませんか。

オルガノ株式会社 江口正浩 様
①阪大チーム(原研究室)との連携でのFD実践はどのような目的や内容だったしょうか。また、実践によってどのような効果や結果に結びついたでしょうか?

 未来社会課題を見据えた新たな事業創出への取組みとして、2019年から2021年度にかけて阪大チーム(原研究室)と連携し、FDを活用した中長期的な開発テーマ創出のワークショップを行いました。
 このFD実践を通じて、現在の延長線上からの発想とは異なる新たなアイディアが出ることを体験しました。未来を俯瞰する視点を持つことは、研究開発テーマの設定だけでなく、企業の長期戦略や、ひいては私たちの日常生活における意思決定にも応用できる、普遍的な価値があると考えています。


②今後、フューチャー・デザインをどのように実践・応用していきたいですか?(今後の展望)

 長期的な未来視点が必要な、気候変動、水資源、生態系、資源循環といったサスティナビリティに関わる喫緊の社会課題への取り組みに応用していきたいと考えています。
 FDを通じて、社内外の多様な人々とのコミュニケーションを活性化し、新たな人材交流を促進しながら、未来志向の新たなアイディアを共創していきたいと考えます。

経済産業省近畿経済産業局 担当者
環境省近畿地方環境事務所 担当者
①阪大チーム(原研究室)との連携でのFD実践はどのような目的や内容だったしょうか。また、実践によってどのような効果や結果に結びついたでしょうか?

 私たちは2023年12月に開催した「近畿地域エネルギー・温暖化対策推進会議」(以下、「温対会議」と言います。)において主に以下の3つを目的に初めてフューチャー・デザインを実践しました。
 ○ 議論をより活性化し温対会議をより意義のあるものとすること
 ○ 活発な議論により温対会議の参加者の関係性を強化すること
 ○ 参加者の関係性の強化による参加者同士が共働した新しい取組づくり
 「フューチャー・デザインの実践」として具体的には、「2050年のカーボンニュートラル実現のために今後10年以内に実現すべき取組等」をテーマにフューチャー・デザインの手法を用いたワークショップを実施しました。
 温対会議は近畿地域においてエネルギー・温暖化対策に関係がある国の行政機関、地方公共団体、産業支援機関、民間企業等、様々な主体が参加するほかに例がない会議であり、実施したワークショップでは活発に議論が行われました。共働した新し取組とまではまだ聞いていませんが、議論の活性化、参加者の関係性強化には大きな手応えを感じました。
 なお、2024年には温対会議の分科会として「カーボンニュートラル実現に向けたフューチャー・デザイン分科会」を設置し計3回開催。よりカーボンニュートラルをテーマの中心に据え、フューチャー・デザインの手法を用いたワークショップを実施しました。議論の成果は「2050年カーボンニュートラル実現に向けたアイデアカタログ」として取りまとめ公表しています。


②今後、フューチャー・デザインをどのように実践・応用していきたいですか?(今後の展望)

 フューチャー・デザインを実践して実感したメリットについては、大きく分けて3つあります。一つ目は、長期的な視点に立ち、目標である2050年から逆算してカーボンニュートラル実現を考えることができること。二つ目は、自分が所属する組織や立場から離れて仮想将来世代として自由な発想ができること。三つ目は、多くの視点・発想を取り入れて多様性を活かせること。こうしたメリットは、行政の課題解決やまちづくり、企業の経営戦略などを考える上で、大いに活用できることが改めて確認できました。
 特に地球温暖化対策では、全てのステークホルダーがそれぞれの役割を認識した上で、相互に連携して取組を推進することにより、各ステークホルダーの単独による取組・効果を超えた相乗効果を発揮することが求められています。今後、フューチャー・デザインが活用されることを通じて、こうした相乗効果が全国で発現し、ひいてはカーボンニュートラルの実現が後押しされることを期待しています。

05
卒業生の進路のイラスト

卒業生の進路

【進学】大阪大学大学院経済学研究科

【就職】関西電力、近鉄グループホールディングス、ソフトバンク、富士通、日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング、三井住友銀行 等 (五十音順)、個人事業